20世紀ウィザード異聞

第十章 5

 翌六日、ステファンは十一歳の誕生日を迎えた。
 マーシャは居間のテーブルクロスを変えて花を生け、張り切って特大のケーキを焼き始めた。
「そんな大げさにしなくたっていいのに。なんか恥ずかしいよ」
 テーブルを端に寄せ、いつもとは違う様子に整えられた居間を見て、ステファンは戸惑った。
「大げさじゃないよ。今日はステフにとってもわたし達にとっても大事な日なんだ。ちょっと手伝ってくれ、屋根裏にあとニ脚、椅子があったはずだ」
「本当にお客を呼んじゃったの?」
「そうだよ、これも計画のうちさ。君の誕生日にかこつけて悪いなとは思ったけど」
 屋根裏への梯子段を昇りながら、オーリは悪戯を企むような顔をしている。

 ステファンはここ数日のめまぐるしいドタバタを思い出していた。
 ヴィエークホールの美術展で評判を呼んだオーリの絵は結局、国内の資産家が良い値で買い取ることとなったのだが、そこからが大変だった。まず、美術展初日に名乗りをあげた例の外国人女性――ジゼル・ミルボーと名乗った――が、絵を諦める代わりにぜひエレインと直接会って話を聞きたいと熱心に言ってきたのだ。やがてこの女性だけでなく、新聞で竜人のことを知ったという多くの人が問い合わせてきた。
 オーリはこの事態を予測していたようで、彼らをステファンの誕生祝いの席に招待し、そこでエレインの話を披露すると言った。ただし条件付きで。
 条件とは、現在の竜人がどういう扱いを受けているかを知ってから来ること、そしてオーリの家の前に設けた『関門』を通り抜けられること、の二つだ。

「招待とか言いながらあの関門はないよ、先生。魔法で作った生垣の迷路でしょう? 無事に通り抜けられる人って居るのかな」
 埃っぽい屋根裏部屋で椅子を引っ張り出しながら、ステファンは明り取りの小窓から庭を見た。この季節、ほとんどの植物が枯れた姿を晒している中で、力強い常緑樹の緑色を誇っているのがオーリの作った迷路だ。たいした距離でもなく、難しい道でもないはずだが、オーリが言うには、興味本位で竜人を見てやろう、などと思って来た者は間違いなく迷い、カラスに突かれて逃げ帰ることになるらしい。
「ま、難しいとは思うよ。そら、早速入り口でカラスの歓迎を受けてる奴が居る」
 オーリが指差す先に見えるのは、見覚えのある郵便配達夫の帽子だ。ステファンは大急ぎで屋根裏から下り、カラスにつつかれて悲鳴をあげている若者を助けに行った。
「シッシッ! だめだよ、この人は仕事で来たんだから」
 ステファンが杖を振ると、カラスたちは小馬鹿にしたように鳴き騒ぎながらも木の上に飛び去った。
「痛ててて、いい加減、担当を替えてもらいたいよなあ……ほらぼうず、お前さんに小包み。いいなぁお前、杖まで持っちゃってさ。毎日エレインさんの顔も見られるしさ。ちぇっ」
 そばかす顔の若い郵便配達夫はぶっきらぼうに茶色い包みを手渡すと、ため息をついて帰ろうとした。
「あのう!」
 ステファンは声を掛けずにはいられなかった。

*  *  *

「良くお似合いですよ、エレイン様」
 二階の部屋では、大きな鏡の前でエレインが重厚な衣裳をまとっていた。白地の袖の長い服には幾何学模様の縫い取り、同じ模様を織り込んだ前垂れ――竜人フィスス族の語り部が受け継ぐ式服だ。後ろに引きつめた赤い髪には極彩色の羽根飾り、耳に光っているのはいつかの黒い封印石ではなく、紅い石だ。
「またこの衣裳を着る機会があるなんて思わなかったわ」
 エレインは誇らしげに腕を伸ばして、袖口を飾る幾重もの幾何学模様を指差した。
「これは御祖母おばあさまの縫ったところ、これはその前の語り部の。そしてあたしが縫った紋様はこれ。あまり上手じゃないけどね」
「立派ですよ、大事になさいまし。たとえ生まれた地を失ったとしても、失っちゃいけないものがございます。それは人間も竜人も同じこと。オーリ様もきっと力を貸してくださいますよ」
 手を取って祈るように言うマーシャの言葉に、エレインは微笑んだ。
「先のことは分からないけどね。でもありがと、マーシャ。『語り部エレイン』の務めを果たしてくるわ」
 部屋のドアを開けると、十一月の風が窓を揺する音が聞こえる。エレインは背筋を伸ばし、階段を下りていった。

「――でね、この黒いローブも今日届いたばかりで、ぼくまだ慣れてないんです。誕生日のお祝いにってお母さんが贈ってくれたんだけど。あれ? でもぼくのお母さんは魔法ぎらいなのに、どこでこれ買ったんだろ」
 ステファンの無邪気な言葉に客人たちはどっと笑った。
 赤々と燃える暖炉のせいばかりでなく、居間の中は暖かだ。子供も含めて十数人が集っている。結局はこれだけの人数がオーリの作った緑の迷路を無事に通り抜けたということだ。
 反面、カラスの手ひどい歓迎を受けた者たちもいた。カメラを持ったゴシップ誌の連中などはまず入り口で弾かれ、冷やかし半分で来た者などは迷路の中で堂々巡りをした挙句、疲れ果てて入り口に戻るはめになるのだ。
 最初に難なく迷路を通り抜けたのは、子供たちだった。続いて彼らの母親。新聞で初めて竜人と人間の過去を知り、心を痛めた人たち。例の外国人女性、ジゼル・ミルボーは本国で『竜人学』を研究しているとかで、子供のように歓声をあげながら迷路を楽しんで通り抜けてきた。
 ほとんどの人は、魔法使いの家ということで最初は緊張した顔をしていたが、オーリの気さくな人柄と薫り高いお茶を前にして、すぐに心がほぐれたようだ。ケーキを切り分けたあとは口々にステファンに向けておめでとうを言い、新米魔法使いのローブ姿に目を細めて談笑を始めた。
 
 ころあいを見て、オーリが立ち上がった。
「皆さん、竜人の話を心待ちにしていることでしょう。そろそろわたしの守護者を呼びます」
 オーリに招き入れられ、居間の戸口に現れた赤毛の娘を見て、客人からどよめき声があがった。
「おお、あの絵に描かれていたのはこの女性ですな?」
「なんて赤い髪……でもあの、こんな綺麗な娘さんが竜人? 信じられない」
 疑うというよりも戸惑っている客人たちに、エレインはニッと笑って長い袖をたくし上げてみせた。
 すんなりとした腕の外側に長く、竜人特有の青い紋様が続いている。
「オオ! コレハ」
 ジゼルが立ち上がって近づいた。
「……間違イ無イ。刺青タトゥーナドデハアリマセン、竜人ダケガ持ツ紋様デス。アナタハフィスス族、デショウ?」
 感極まった様子のジゼルにエレインは快活に答えた。
「そうよ、あたしは竜人フィスス族最後の生き残り、語り部のエレイン。しばらくあたしの話を聞いてくれる?」
 
 エレインは穏やかに、けれどよどみの無い口調で竜人の創世譚から語り始めた。ステファンもこんな風にエレインから直接聞くのは初めてだ。彼女の言葉は淡々として、物語りとも歌ともとれる心地よい韻律で部屋を満たした。始めは物珍しさからクスクス笑っていた子どもたちも、やがて真剣な顔で彼女の言葉に聞き入るようになった。
 人の発する生の音声というものは、どうしてこんなに心を揺するのだろう。 
 エレインが語り始める前、オーリは『語り部』の力について少し説明を加えた。人間にいろんな言語があるように、かつては竜人にも種族ごとに独自の言葉があったこと。けれど人間との戦いの歴史の中で、しだいにその言葉は薄れ、今は失われてしまったこと。エレインには過去の竜人たちの声を聞く能力があるが、今日はそれをそのまま伝えるのではなく、彼女自身の言葉で語るのだということ。
 それだけ言うと、オーリはエレインの肩に手を置いて、しっかりね、と言ったきりなぜかそのまま居間を出てしまった。
 ステファンは内心、気が気ではなかった。八月の終わりに、花崗岩に封じ込められた竜人の怨念に同調してしまったエレインの恐ろしい姿を覚えていたからだ。オーリが新しい封印の石を着けてあげたとはいえ、またあんな風になりはしないだろうか?
 エレインの語りは淡々としているが、時々声が震えることがある。人間への怒りを懸命に抑えているのだな、ということがステファンにも痛いほど解る。

 ――エレインの一族が守ってきた美しく肥沃な大地。『新月の祝い』は、普段離れて暮らしているエ・レ・フィスス(父親たち)とベ・ラ・フィスス(母親たち)が顔を合わせる唯一の日であると共に、魔力を忘れて『人』としての姿を取り戻す厳かで神聖な日のはずだった。けれど人間たちはその日を狙って侵攻して来た。エレインが初めての伴侶を選ぶはずだった美しい日は、こうして一族最期の日となってしまった。父親たちは皆、その場で戦い果てた。エレインも共に戦うつもりでいたが、一番年若いエレインを逃すことで母たちは希望を繋ごうとした――

 やがて話がエレインの母たちの最期に及ぶと、それまで水の流れるようだった彼女の言葉が途切れはじめた。長い袖に隠れた拳がぎゅっと固められている。
 いたたまれなくなって、ステファンは思わずエレインの傍に行った。
 どうしよう。こんな時に何と言ってあげればいいのだろう?
 言葉が見つからずステファンはただ、固まった拳を両手で包んだ。と、もうひとつの小さな手が伸びて、エレインの手に重なった。一番最初に迷路を抜けて来た八歳くらいの女の子だ。
「だいじょうぶ? 竜人のおねえさん」
 女の子に続いて、もう一人。そしてまた一人。その場に居た子どもたち皆が集まってきて、心配そうにエレインの手を取ったり顔を覗き込んだりし始めた。
「……ありがとう。あたしは大丈夫。さ、話を続けるから座って」
 エレインは少し青ざめた顔で、それでも微笑みを浮かべて子どもたちを見回した。
「少し休憩を挟んではいかがです? ほら、この人もお茶を出すタイミングに困ってる」
 客人の紳士が立ち上がって居間のドアを開けた。
 ドアの向こうでは、マーシャがお茶をワゴンに乗せたまま、ハンカチで鼻を押さえて号泣しているところだった。

 それにしても、オーリは何をしているのだろう。こんな時にこそエレインの傍に居なくちゃ駄目じゃないか、とステファンは腹を立てながら、エレインが落ち着いたのを見計らって、二階へ上がってみた。
 案の定、アトリエに灯りが点っている。
「もう先生、何やって……!」
 言いかけた言葉を呑み込んで、ステファンは目を見開いた。
 部屋じゅうに紙が飛び交っている。オーリはその中で、じっと目を閉じて立ち尽くしていた。杖を自分の額に向けているのは、かつて迷子になったアガーシャを探した時に見せた、魔力を強めて集中する姿勢だ。
 机の上の羽根ペンが十本とも、ものすごい勢いで走っている。ペン画を描いているだけではない。普段は無い金属のペン先が付けられている数本が書いているのは、文字だ。インクをつける時間も惜しむように、交代でおびただしい文字を書き付けている。
 インク壷の隣には、蓄音機のホーンのような形の金属の花が震えている。そこから聞こえるのは居間で語っているエレインの声だ。
「……そうだ、語り続けるんだエレイン……怒りに負けるな……」
 オーリは目を閉じたまま、エレインがすぐ近くに居るようにつぶやいている。
 足元に落ちてきた一枚を手に取って、ステファンはオーリが何をしているのかを知った。エレインの語る言葉と記憶の光景をそのまま書き残しているのだ。しかも同時に、いつにも増して強い魔力を彼女に送りながら。オーリは時折足元をふらつかせ、それでも一心に集中していた。
 ステファンは急いで椅子を寄せ、オーリを座らせた。
「先生、何やってるんだよ、もう。いくら先生でも、こんな同時にいろんな魔法を使うなんて、無茶だ!」
「ステフか。時間が無いんだよ。竜人をこれ以上苦しめるような悪法が動き出す前に、エレインの言葉を世の中に伝えなきゃ。それには正確な記録が必要なんだ」
 オーリは目を開けないままでうめくように答えた。 
「それならいっそエレインの隣に居て、手を繋いであげてよ。エレイン、独りで可哀想だよ。力を送ってあげられるのは先生しかいないんでしょう」
「そんなことをすればお客たちは、わたしが魔法でエレインを操って語らせているように思うかも知れないよ。それに羽根ペンたちはこのアトリエ出ては仕事ができなくなるんだ。さあ、分かったら邪魔をしないでくれ!」
 額に汗を浮かべながら祈りにも似た姿でいるオーリと、さっき居間で懸命に怒りを抑えていたエレインの姿がダブって見える。何を言ってもオーリはこの魔法を止めそうにない。ステファンは黙って床に散らばった紙を拾い集め、微動だにしないオーリを残してそっとアトリエを出た。

 夜になると、エレインはさすがに疲れたのか早々と天井の梁に上り、日没後の小鳥のように眠りについてしまった。けれどオーリにはまだしなければいけない仕事があった。机の隅で埃を被っていた古いタイプライターを持ち出し、エレインを起こさないように『無音』の魔法を掛けると、昼間羽根ペンたちが書き取ったエレインの物語を清書しはじめたのだ。
 けれどオーリはどうやらタイピングが苦手のようだった。金属のアームが何度も絡まり、焦る割りには一向に進まない。見かねたステファンはオーリをタイプライターの前から押し出した。
「だめだよ先生、時間が無いんでしょう。ぼくにやらせて」
「何だって? 君、できるの?」
「結構得意なんだ。お父さんの仕事の手伝いで覚えたから」
 ステファンは紙を二重にして挟み直すと、猛烈な勢いでキーを打ち始めた。ピュウ、と口笛を吹いて、オーリは目を見張った。
「驚いた、ガーリャが目覚めて働いてる!」
「ガーリャって、これに棲みついてるやつ? アガーシャみたいに」
 キーを打つ手を止めないまま、ステファンは問うた。
「そうだよ、これをトーニャから譲り受けた時からまともに働いたことが無かったんだが。ありがたい、その調子で頑張ってくれ、ステフ。わたしは挿絵を仕上げるよ」
 こんなに急ぎの仕事なんてどうしたんだろう、と思いながらもステファンは自分の力がオーリの役に立っているとおもうと誇らしさでいっぱいになった。
 結局、使い魔のトラフズクが窓に降り立つ頃には、全ての清書が終わり、オーリは拳を宙に突き上げて快哉を叫んだ。
「オスカー、感謝だ! わたしに弟子ばかりでなく有能な助手まで遣わしてくれた!」
「しーっ、先生、エレインが起きちゃうってば!」
 魔法使いたちの騒ぎを尻目に、トラフズクは冷静な顔で通信筒を背負い、
「滅び行く者、声をあげよ、ってことですな……」
 とつぶやくと一礼して飛び立っていった。

 エレインの話は評判を呼んだようだ。もっと話を聞かせて欲しい、という声が引きもきらず、オーリは次の週からも何度か客を招いた。エレインの語りにはますます熱がこもったが、最初の日のように怒りで声を詰まらせるようなことは無くなった。話を聞き終えた人びとは彼女の手を取って、今まで竜人のことを誤解していた、済まなかった、と涙を浮かべながらしばらく時を忘れて話し込むのが常だった。中にはジゼル・ミルボーのように何度も訪れる人も居り、いつのまにかエレインには人間の友人が何人もできていた。
 相変わらず『関門』の迷路で弾かれるゴシップ記者たちが腹立ち紛れに酷い記事を書きたてたが、果たしてそれを真に受ける者が居たかどうか。『竜人とのお茶会』に感動した人の話は耳から耳へと伝わり、迷路を通り抜けられることがひとつの名誉のようにさえ語られるようになっていった。

 そんなある日、ステファンは話を聞き終えた客の中でひときわ派手に号泣する人を見た。制服を着ていなかったので最初は分からなかったが、そばかすだらけの童顔には見覚えがある。いつも来る郵便配達の若者だ。ステファンに声を掛けられてから何度か迷路に挑んだが、結局今日まで来られなかった、と鼻を真っ赤にしながら言った。
「おれ、知らなかった。エレインさんがあんな辛い思いしてきたなんて。竜人なんか自分には関係ないって思ってたもんなあ。お前やオーリ先生は知ってたんだよな、敵わないよなあ……」
 若者はすっかりしおれてしまった花束をテーブルに置くと、帰ったら郵便局長にもこの話をする、と約束して鼻をすすりながら帰っていった。
 
 客が全て帰っても、迷路の入り口でカラスが騒いでいる。オーリは庭に出て指を弾き、カラスを遠ざけてから呆れたように声をかけた。
「あんたも懲りないね。いいかげん、仕事を離れて一人の人間として来たらどうです? そうすれば通り抜けられるかも知れないのに」
「ああ、長年染み付いたひねくれ根性が邪魔してね。いや、今日はそんなことで来たんじゃないんだ」
 帽子をさんざんに破られた雑誌記者は冷や汗をぬぐいながらオーリに向き直った。
「いいニュースだよ、ガルバイヤンさん。例の髭男、カニス卿が失脚したらしい」
「カニスがどうしたって?」
 不愉快な人物の名を聞いてオーリは眉を寄せた。
「あの髭男、前からうさん臭い奴だと思って調べてたんだけどね。カニスってのは偽名だ。あいつは魔法で他人の記憶を奪って、貴族に成りすましていたらしい。とんだペテン野郎さ。最近になって記憶を取り戻したっていう貴族から訴えられて、今大変なんだと。傑作だろう?」
「あの犬男爵め、そんなさもしい事やってたのか……で、それをわたしに言ってどうしようっていうんです」
「どうもしないさ。ただ、あんたに言われてから俺も改めて竜人の話を聞いてみることにしてね。とある少年からカニスとあんたの因縁を聞いたんで、伝えておきたくなったのさ。仕事抜きでね」
 記者は照れ隠しのように、破れたハンチング帽子を深く被った。
「その少年って、カニスに売られたという竜人の? あの子は今どこに?」
「船に乗ってるよ。港の人足として働いていたところを外国船の船長に気に入られてね。ちゃんとした契約の元だから管理区に送られる心配はないよ。今頃はきっと、東回りで外洋に向かっているだろう。銀髪の魔法使いに会ったらよろしく伝えてくれって頼まれたんだ。竜人の味方をする人間も居ると知って、生きる希望が湧いたってね」
 そこまで言うと、記者は腕時計を見て慌てて道端の車にカメラを放り込んだ。
「ちぇ、時間切れだ。今日も記事にならなかった。せめて赤毛美人の写真でも撮れたらなあ」
 冗談まじりに言う記者に、オーリは真顔で答えた。
「あんたは竜人の話を聞く耳を持っているんじゃないか。もうくだらないゴシップ記事なんて止めたらどうです? お宅の雑誌が事実を曲げずに書くようになったら、いつでも喜んで招待しますよ」
 記者は答えず、苦笑いを残して走り去った。
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