◇第二部◇ステファンの杖
これまでのあらすじ
一九五二年、夏。
臆病で泣き虫の少年ステファン・ペリエリは、見えないはずのものが見える自分の力に悩んでいた。十歳の夏、ステファンの元へ訪ねて来たのは父の親友だという青年オーリローリ・ガルバイヤン(通称オーリ)。職業は画家、そして魔法使い。行方不明の父オスカーから手紙で託された通り、理解のない母親の元からステファンを弟子として引き取ってしまう。
連れられて来た森の中の一軒家では、オーリの守護者である竜人の娘エレイン、家政婦のマーシャ、そして有形無形の不思議な住人(?)たちとの生活が待っていた。
魔法使いになるための修行の日々は穏やかに過ぎるかに見えたが、ある事件がきっかけでステファンが『
執行者憑き』と呼ばれるやっかいな特性を持つ子だということが明らかになる。ステファン自身も『あいつ』と呼んで怖れてきた見えない力が、無意識のうちに周りの物を傷付け、壊してしまうのだ。
かつて教育に失敗した最初の弟子、アドルフも『執行者憑き』であったことからオーリは苦悩するが、それでもステファンの可能性を信じ、魔法使いとしての杖を与えようとする。